夏である。全国平均的に夏真っ盛りである。
友枝町の木之本家も、もちろん夏である。
そしてさくらは、今日も溶けているのである。
けだるい午後2001 〜さくら〜
「はう〜〜。シベリアあたりに行きたいよぅ〜」
なんだかよく解らないことを口走っている。
今日の天気はどんよりと曇り。でも空が明るいので、だんだんと雲が薄くなってきているのだろう。夕方には晴れると、天気予報も言っていた。
ただ、異様に蒸し暑い。日本特有の湿気90%以上の空気が充満している。
そんな中でさくらは床に寝転がっている。冷たいフローリングが地肌に心地よい。
「……って、この間も同じようなことやってたよね、私…(^^;)」
苦笑、しかしすぐにその顔はだらしなく伸びていく。カラッとした灼熱地獄もイヤだが、煮込まれるような釜湯地獄はもっとイヤだ。
溶けたくても、周りの湿気が高くて気化できない、そんな感じだ。
「にゃうぅ。ふぁう〜。あふぅぅ〜〜」
理解不能な言葉を発しながら、さくらは居間から廊下、キッチンへと冷たい床を求めて這いずり回っている。とても年頃の女の子の恰好ではない。
そう、日本の夏は、明朗活発健康少女をここまで狂わすほどに不快指数が高いのだ。
「狂ってるわけじゃないよう」
その言葉にも元気はない。……つーか、こっちの文章に反応しないように、さくらさん。
「はーい」
…そうこうしていると、彼女の目に冷蔵庫が映る。
「あ、そうだ。冷たいお茶があったよね」
ずるずる、と這いずってその前にペタンと女の子座り。そしてドアを開ける。途端に流れ出してくる北国のような冷気。
「はあああぁぁぁぁぅぅ〜〜〜(*^▽^*)」
至上の笑顔だ。まさにこの瞬間は他の物は何も要らない、といった感じの笑顔。
「極楽だよ〜、このままでいたいよ〜。でも、電気代が〜」
間延びしながら言って、名残惜しそうにドアを閉める。なんだかもうお茶のことは忘れているみたいだ。
再び床に寝転がり、ふと居間のテーブルを見る。そこにはピンク色の携帯電話。
「……電話、くれないかなぁ」
つぶやく。相手はもちろん小狼だ。夏休みを利用して、知世の家に泊まりに来ている。
「……会いたい……な(//ω//)」
その時だ。携帯電話から静かな着信音が流れた。さくらは飛び起きると、信じられない速度でそれを取る。
「はい、さくらです!」
むやみに元気がいい。しばらくの沈黙、そして、
「ほええぇ〜!! 何でわかったの??」
叫ぶさくら。
いったい何を電話口で言われたのか?
それは、このあとの「〜ともよ〜」で明らかになる!
では続けて、「けだるい午後2001」行ってみよう〜!!
けだるい午後2001「〜ともよ〜」へ
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