LITTLE MY STAR    「魔界天使ジブリールEPISODE2」 ジブリールアリエスことひかりちゃんを愛でるサイト

 「よろず屋 斧桜亭」の斧桜様より、素晴らしいショートストーリーを寄稿していただきました。本当に素晴らしくて、思わず幸せで目眩がしてしまうくらいです。本当にありがとうございました。
作:斧桜 様 



「さくらぁ! こっちや! みつけたでー!」
 友枝町郊外の林の中、ケロが叫ぶ。
「うん! ……ジャンプッ!」
 地面を一蹴り、さくらは一瞬にして木の上に駆け上る。そして、
「彼の者を優しく包め……ウインディー!」
 カードの発動。風がゆっくりと木の葉を揺らした。

 ●「チェンジパニック!」●

「やぁ〜、ありがとう。助かったよ」
 ペットショップの店員は、さくらから小鳥を受け取ると笑顔で言った。
「しかし、よく捕まえられたね? 大変じゃなかった?」
「いいえ、そんなこと無かったです」
 ふるるっと首を振る。
「じゃ、ちょっと待っててね。お礼するから」
「そんな、お構いなくーー」

 結局、お礼にお菓子を貰ったさくらは、それを摘みながら歩いていた。
「なんや、さくら? 難しい顔して?」
 ケロはリュックの中でお菓子にパクついている。
「ん〜、お礼なんか貰う気じゃなかったから、何だか悪い気がするよぅ〜」
「ええやんか。くれるっちゅうもんは貰っとけば。当然の報酬や」
「食べ物じゃなかったらいらないって言ってたのは誰だっけ?」
「はぁ〜、お菓子、美味いなぁ〜」
 はぐらかすケロ。さくらは「ホントにもうー」と息を吐く。そこに、ずっと一緒にいた知世が声をかけた。
「さくらちゃんは良いことをしたんですもの。お礼を受け取っても、バチは当たりませんわ」
「……そだね。うん」
 ぱっと笑顔になる。知世はそれを見て微笑むと、言葉を続けた。
「けれど、少し悲しいですわ」
「ほぇ? なにが?」
「久しぶりのカードを使う機会だったというのに、衣装を用意し忘れるなんて、ビデオキャプター最大の失敗ですわ〜!」
「び、びでおきゃ……なに?」

 そうこうしているうちに、さくらの自宅。
「ごめんなさい、さくらちゃん。無理を言ってしまって…」
 さくらの自室、知世が言う。
「ううん、そんなことないよ。カードくらいならいつでも見せてあげるよ」
 そう言って、知世の前に座る。
「はい、知世ちゃん」
「お借りします」
 知世は差し出されたカード達を手に取った。
 お菓子を食べながらの帰り道、カードの模様の話になった。そこで知世は、一度カードをじっくりと見てみたいとさくらにお願いしたのだ。それならと、さくらはすぐに彼女を自宅に誘って、現在に至る。
「みなさん、美しい姿をされていますね」
 一つ一つゆっくりと眺めながら、知世は目を細める。
「あんまり誉めると、カードらが照れるで」
 と、ケロ。
「でも、カードさん達、うれしそうだよ」
 知世の見終わったカードを受け取りながらさくらが言う。
「新しい衣装のイマジネーションが膨らみますわ〜。このウインディさんのふわっと感は勉強になります〜」
「い、衣装?」
「ところでさくらちゃん」
 ウインディのカードをさくらに渡す。
「カードさん達の中で一番よく使っているのは、やはりウインディさんですかね?」
「うん、そうだね。カードさんを捕まえていたときも、優しくしてあげたかったから、ウインディばかり使っていたからね」
「ま、最初から持っとったカードやしな。使用頻度も増えるわ」
 ケロは紅茶を飲みながら、うんうんとうなづく。
 知世は次のカードを手に取った。
「逆に、このチェンジさんは使い所が難しいですわね」
 途端にケロはイヤな顔をする。
「チェンジの話はやめてくれ。なんやイヤなこと思い出してまうわ」
「そんなこと言ったらチェンジがかわいそうだよ。悪気があった訳じゃないんだから」
「そらそやけどなぁ。…ほんまにあんな思いは二度としたないで」
 大げさに身震いをしてみせる。それを見て知世はクスクス笑いながら、チェンジのカードをさくらに手渡した。
 …その時、突然カードから光が溢れ出た。
「な、なに?」
 声を上げるさくら。次の瞬間、その光は弾け、彼女の意識は暗闇へと落ちていった。

「……ら……、さく……ん」
 どこかで聞いたような声がする。
「さ……、さくら…、おい! さくら!」
 これはケロの声だ。そして、もう一つの声は…。
「さくらちゃん、さくらちゃん!」
 ……? 自分の、声?
 パカッとさくらは目を開いた。同時に妙な感覚に捕らわれる。
体がだるい。変な疲労感だ。それに、自分は横に寝ているのに目の前に鏡があって、その中のさくらは大粒の涙を浮かべて自分を覗き込んでいる。
 …………少しの沈黙。そして。
「あ? あれ?」
 飛び起きて、自分を見る。
 自宅に帰って、着替えていたはずなのに友枝の制服を着ている。視界の端に見えるのは、艶やかな黒髪。そして自分の出す声は、知世のそれだ。
 つまり、今さくらの目の前にいるさくらは…?
「と…、知世ちゃん?」
 と、知世の声で聞く。眼前のさくらはこくんとうなづいた。
「さすがさくらやな。何の説明も無しで事態を把握したか」
 ケロは感心したように言った。その首根っこを掴んで知世になったさくらはガクガクと揺らす。
「さすがじゃないよ! どうしてこんなことに……、あっ!」
 チェンジのカードのせいだ、とさくらは思い、カードに手を伸ばす。と、その手をさくらになった知世が掴んだ。
「知世ちゃん?」
「さくらちゃん、気分は悪くないですか? ずっと目覚めないから、心配でした…」
 本当に心配してくれていたようだ。
 しかし。
 さくらの姿で瞳を潤ませ、いつもの知世口調で寄り添われるというのは、どうにも変な感じだ。
「あ、ありがとう。知世ちゃんの方こそなんともない?」
 精一杯の笑顔で答える。
「私の方はなんとも…、あ、でも、少し変な感じが…」
「そら、魔力のせいやな」
 ケロは、ぴょんと机の上に座り、話を続ける。
「魔力っちゅうもんは、心と体に宿るもんや。ようわからんかもしれへんけど、簡単に言うたら、実際に魔法を使うのは体の魔力。眠って予知夢なんか見たりするのは心の魔力のせいや」
「ほえ〜、二種類あったんだ。気にしたことなんか無かったよ」
「ま、本来は全然気にせんでもええことや」
「と、言うことは今の私たちは?」
「おっ、知世はわかったようやな」
 ケロはポンと手を打つ。
「さくらと知世は心が入れ替わった状態。つまり、今は半分ずつ魔力を持っとるんや」
「??? 半分ずつ?」
 さくらはまだ合点がいってない様子だ。
「ですから、さくらちゃんの体には、体の魔力が残ったまま私が移り、さくらちゃんは心の魔力を持って私の体に移った、ということですわ」
「ほえぇ〜、ややこしいよう〜」
 頭を抱えている。
「知世の言う通りやな。せやからさくら、魔力が半分無ぅなって、妙な感じやろ?」
 うなづくさくら。
「知世も、本来持ってない魔力を感じて、妙な感じやろ?」
「はい…」
「わいもへんな感じや。さくら口調の知世に、知世口調のさくら。……考えようによっちゃ、おもろいことになったな」
「ケ・ロ・ちゃん!」
「おぉ! 怒り顔の知世や! こんなん二度と見れんで!」
「あのねぇ〜」
 脱力さくら。そこに、知世が困ったように言った。
「しかし、これからどうしましょうか? 戻る方法は……」
 それを聞いて、さくらはチェンジのカードを手に取る。
「カードを使って戻ればいいんじゃないのかな?」
「いや、おそらくダメや」
 と、ケロ。
「さくらが自分から使ぅてチェンジしたんならまだしも、今回はどういう訳かカードが勝手に発動した。その原因がわからんかぎり、元に戻るのは無理やな。…それに」
 ケロは肩をすくめて言う。
「半分の魔力じゃ、封印の鍵を使うことすらできんで。さくらは気になってないやろうけど、あれにはごっつい魔力を使ぅとるんや」
「それでは、どうすれば?」
 知世の質問に、ケロは難しい顔をする。
「チェンジのカードには、わいが話をするとして、今日のところはとりあえず…」
 そう言って二人の顔を交互に見る。
「え? なに?」
 さくらは知世を見る。
「大丈夫ですわ。さくらちゃんなら」
「え? なんのこと?」
 次にケロを見る。
「知世のことは心配いらん。自分のことだけ考えとき」
「え? えぇ? ま、まさか?」
 さくらはこのとき、不本意ながら「王子と乞食」という物語を思い出していた。

 その日の夜、大道寺家の知世の部屋。
「ほえぇぇ〜、疲れるよ〜〜」
 知世の姿のさくらは力無くソファに倒れ込んだ。
 知世はお嬢様だった、と、改めて実感した。これでもかと言うほどの豪邸。たくさんある部屋。広い廊下。そこを歩けばお手伝いさんが挨拶してくるし、落ち着かない。
 これで夕食が外国の王様のようなメニューだったらどうしようかと思ったが、さすがに献立は普通だった。
 知世のお母さんは出張中で、一人きりの食事だったのが少し寂しかったが…。
「知世ちゃんてすごいんだなー」
 ソファから立ち上がり、部屋の中を見回してみた。
 広さはさくらの部屋の何倍もある。でも、なんとなくこじんまりとした、あったかい感じの部屋だ。知世の、変に少女趣味じゃない落ち着いたインテリアがそう感じさせるのだろう。
 さくらは隣の部屋へ行ってみる。前に部屋に招待されたときに、ビデオルームだといわれた部屋だ。
 入ってまず目にはいるのは、何インチあるのかわからないほどのテレビ……壁掛けの映写式のものだ。そして、戸棚いっぱいのビデオ。
『さくらちゃん、夜空に舞うの巻』
 予想していたとはいえ、恥ずかしい。百本はあるのではないかというビデオが、すべてさくら関係のものだ。
『さくらちゃん、友枝町漫遊紀〜死闘編〜』
「?????」
 身に覚えのないものまである。見てみようかと手を伸ばすが、やめた。
 仲のいい友達のものでも、私物を勝手に見るのはいけないことだ。
 それに、見るのもなんだか怖い。
 そして、テーブルの上には作りかけの衣装らしきものが置いてある。
 これも、いずれ着ることになるのね、と思って苦笑する。
「お嬢様、入浴の準備ができました」
 その時、扉の外からお手伝いさんの声がした。
「は、はい! 今いきます!」
 素っ頓狂な声で答えて、さくらはあたふたと部屋を後にした。

 そして、浴場。
「うわぁ〜、広い〜」
 脱衣場から浴室をみて、さくらは思わず声を上げた。
 浴槽だけでもタタミ三畳分くらいある。まるで温泉だ。
「こんなお風呂に毎日入れるなんて、知世ちゃんが羨ましいな…」
 うっとりとつぶやいて、脱衣所へ戻る。
 脱衣所も十分広い。壁には見上げるほどの鏡が据え付けてある。さくらはそれに近づくと、
「…………」
 まじまじと自分の顔……知世の顔を眺める。
「やっぱり知世ちゃん、きれいだなぁ〜」
 きめの細かい白い肌。大きな澄んだ瞳。艶やかな黒髪。
 さくらは目をつむり、自分の姿を想像して、もう一度目を開く。
「……負けてるなぁ〜」
 冗談混じりにため息を吐いてみたりする。そして笑顔。
「お嬢様だもんねぇ」
 そう言いながらブラウスのボタンに指をかけて、動きを止めた。
 さくらはここで初めて気がついた。お風呂にはいるためには、服を脱がなければいけないということを。
「……で、でも、脱がないとお風呂、入れないし……」
 だんだん赤くなっていく顔でボタンを外していく。ブラウスを脱ぎ、下着に手をかける。
「ご、ごめんね、知世ちゃん。あんまり見ないようにするから……」
 と、そこまで考えて、さくらは更に気づいてしまった。
 きっと今頃、知世ちゃんも……。
「う、うぅ、仕方がないよね。お風呂、入らないわけにはいかないんだし」
 そんな言葉を何度も何度も繰り返して、さくらは自分を納得させるのだった。

 事件の次の日が日曜日で本当によかった。自分の家の呼び鈴を押しながらさくらはそう思っていた。
 しばらくして、玄関のドアが開く。
「いっらっしゃい、さくらちゃん。お待ちしてましたわ」
 と、出迎えるのはさくらの姿の知世。非常に違和感がある。
「う、うん。おじゃまします…かな?」
 複雑な笑顔でそう言うと、自室へと向かった。
 そうして、さくらの部屋。知世とケロに神妙な顔で向かい合う。
「それで、チェンジとお話はできたの?」
 心配そうに聞くさくらに、ケロは「うーん」と唸ってみせる。
「話せたっちゅーか、話せなんだというか」
「なにそれ?」
「さくらちゃん、少しやっかいなことになってしまったんです」
 知世が言う。それに続いてケロ。
「いや、チェンジの奴な、わいには話せんっちゅうんや。ミラーにしか話しとうないってな」
「ミラーに?」
「そや。前もこんなことあったやろ。それから伝言役としてミラーが気に入られてしもうたらしい」
「でも私、今は魔法使えないんでしょ? どうするの?」
「それについては一つ考えがありますの」
 再び知世。
「さくらちゃんは今、心と体の魔力が離れた状態。なら、それを近づけてやれば魔法が使えるのではないでしょうか?」
「つまり、一つにならんでも、力一杯密着させれば大丈夫やないか、っちゅーことや」
「ほえ? 密着?」
「早い話、さくらと知世が抱き合って一緒に魔法を使えっちゅーこと!」
 ケロは笑顔で言う。そして、しばらくの沈黙。……沈黙。
「えぇぇぇ! だっ、抱き合うって?」
 派手に飛び上がってさくらが叫んだ。顔は真っ赤だ。その手を知世がそっと握る。
「仕方ありませんわ、他に方法が見つからないんですもの」
 彼女を落ち着かせようと、優しく言う。でも、
「…知世ちゃん、喜んでない?」
 さくらに指摘されて、知世は素直に笑顔を作った。
「はぅぅ〜」
「さ、二人とも立ち。さっそくやってみるで」
 元気よく立ち上がる知世と、渋々立ち上がるさくら。
「え…と、それじゃ、知世ちゃん…」
「はい」
 にっこり笑顔の知世の体に手を回す。
 しかし、知世の体とは言っても、実際には自分の体。何とも変な感じだ。
(うわっ、柔らかい。強く抱いたら壊れちゃいそうだよー)
 自分の体を自分で抱くなんて普通できないから、妙に緊張してしまう。それは知世も同じなのか、彼女の肩は小さく震えていた。
 ……いや、違う。緊張で震えているんじゃない。知世はこれから、今まで体験したことのない「魔法」という力を使うのだ。不安でないわけがない。
 笑顔でさくらを元気づけてはいるが、一番不安なのは自分なのだ。
(なのに、私が弱気じゃ駄目だ)
 さくらはギュッと腕に力を入れる。
「知世ちゃん、大丈夫。ぜったい成功するよ」
「……、はい。私もがんばります」
 さくらの肩に顎を乗せるようにしながら、知世はうなづいた。
 封印の鍵を取り出し、二人は手を乗せる。互いに目を合わせ、そして、
「星の力を秘めし鍵よ……」
 二人の足下に、魔法陣が広がった。

 ペンギン公園を夕闇が包もうとしていた。
 春の終わりの風はしっとりと流れる。その中を少女たちは歩いていた。
 まだ足下のおぼつかない知世をかばうようにしながら、さくらが言う。
「家まで送らなくて大丈夫?」
 それに知世は笑顔で答えた。二人の体は、元に戻っていた。
 あの後、ミラーを発動させた瞬間に知世は倒れてしまったのだ。
 魔法を使ったショックで気を失ったんだ、とケロは言った。
 別に心配はいらん、とケロは続けたが、知世は結局チェンジの一件が終わるまで目を覚まさなかった。
 心配だった。だからさくらは知世に寄り添うように歩く。
「本当に大丈夫ですわ。家の者を呼んでいますので」
 そう言いながらも、疲れたように側のベンチに座る。待ち合わせの時間まで少しあるようだ。
「ごめんね、知世ちゃん」
「さくらちゃんは、謝らなくてもいいですわ。私は、良い体験をさせてもらったと思っています」
「…知世ちゃん」
 さくらも隣に座り、そっと手を合わせる。
「でも、カードさんたち……」
「うん、私も、反省しなきゃ」
 そう言ってため息を吐いた。
 チェンジの話を聞いたミラーは、伏し目がちに暴走の理由を話した。「チェンジは寂しかったの」だと。
 ウインディーのように頻繁に使われることもなければ、レインのように時々使われることもない。あまり必要性の無いカードだということは自覚しているが、時々自分の存在理由がわからなくなる、と。
「チェンジのカードがそんなことを思っていたなんて、全然気づかなかったよ」
 情けない、といった口調でさくらは言う。
「カードさんも、みんな生きているんですものね」
「うん。私、まだまだ守護者としての自覚が足りないなって思った」
「…さくらちゃん…」
「だからね…」
 ぐっとコブシを握る。
「これから、カードさんたちと話をしようと思うの。言葉はわからないけど、何か感じることができると思う」
「それは素晴らしいですわ。きっとカードさんたちも喜ぶと思います」
 きらりと瞳を輝かせて知世。それにさくらはいっぱいの笑顔で答える。
 その時、車道の方で車のクラクションが鳴った。知世のお迎えが来たのだ。
「それではさくらちゃん、失礼しますね」
「あ、ほんとに大丈夫? 明日、学校は…」
 立ち上がる彼女にさくらは聞く。
「心配はいりませんわ。だいぶん気分は良くなりましたから。今日は家でゆっくり休むことにします」
「そっか、うん、じゃあゆっくり休んでね」
「はい、では」
 そう言って立ち去ろうとする知世に、さくらは思い出したように呼びかけた。
「そういえば知世ちゃん、昨日の夜は…」
「夜?」
 振り返って首を傾げる。
「あ、あの…、お風呂……」
 聞かなきゃ良かったー、とさくらは思ったがもう遅い。顔が赤くなっていくのが自分でもわかってしまう。
 そんなさくらを見て知世は、すごく小さい声で、
「さくらちゃん、可愛すぎましたわ。不覚にも目眩炸裂してしまいました」
 と言って、キラキラバックでさくらを見つめる。
「え? なに? 知世ちゃん、よく聞こえなかったけど…」
「さくらちゃん!」
「は、はい?」
「私、昨夜のことは、永遠に忘れませんわ! 記憶の中の一番大切なところに焼き付けておきます!」
 ……呆然とするさくら。
「おほほっ、では、また明日〜」
 知世はそう言い残して去っていった。あとにポツンとたたずむさくら。
「…………」
 かなり、時間がたってから、
「わ、忘れてぇ〜〜! 知世ちゃぁぁん〜〜!!」
 叫んでみてもその声は、星の輝き始めた空に消えていくだけだった。

 ●おしまい● 2000/5/24 onozakura





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